【2】相続事業承継対策 | (6)自社株対策

相続事業承継対策に関する以下のQ&Aにお答えしています。
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(6)自社株対策の質問を表示しています。

  • 【Q1】そもそも自社株対策とはどのようなことでしょうか。

    【A】自社株とは、「自分の会社で発行した株式」のことです。

    普通に考えれば、なぜ「自分の会社の株式について対策が必要なのか」と思う人も多いことでしょう。実際に、中小企業経営者の多くは、社員の誰よりも多く自社株を保有しているのではないでしょうか。

    では、この自社株の何について対策をするのかというと、実は相続が発生した際に自社株がとても大きな負担になるために、あらかじめ対策を講じておきましょう、ということなのです。「なぜ自分の会社の株式が負担になるのか」と思う人もいるでしょうが、負担になるのは現在の経営者ご自身ではありません。経営者の跡を継ぐ次期経営者、つまり後継者に負担が重くのしかかってくるのです。

    その理由には、「換金しづらい」「やみくもに売ることはできない」「相続財産として分配しづらい」などが考えられるからです。とくに相続財産に現金が乏しく、自社株が大半を占めるような場合は、法定相続人との間でトラブルになりかねません。

    自社株とは、それだけ扱いが難しい財産なのです。こうした問題を軽減するためにも、経営者としては自社株対策をすることがとても大切といえます。

  • 【Q2】非上場の自社株評価額が高いと、相続税が高くなるといわれました。それはどうしてですか。

    【A】自社株の評価方法については、上場しているか、非上場かによって違います。

    上場していない非上場の株式は、ほとんど流通していないものですから、その評価額は実際に計算してみないとわからないわけです。非上場の株式を評価する方法ですが、相続税に関係してくる場合は「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」「併用方式」の3種類を用います。ちょっと難しいですが、ようするに、同業他社の上場株式を参考に価額を出すか、資産から負債を除いて純資産を出して計算するか、これら2方式の併用を用いるか、このどれかで自社株の評価額を表します。このどれかで計算したとして、思いのほか評価額が高くなった場合、それはすべて資産としてみなされますから、当然に高額となります。

    特にオーナー経営者であれば、自社株の持ち株割合も高いでしょうから、評価額が高ければ相当な資産になります。

    つまり、自社株の評価額によって、資産が増えることから、相続財産も大きくなるという理屈なのです。評価額によっては、何億円もの資産となり、その結果、数億円の相続税を課せられる、ということだってありえなくはありません。普段から、自社株がどれほどの評価額なのか、調べておく必要があるといえます。

  • 【Q3】もし、資産のほとんどが自社株だった場合、相続時に何か問題は起こるでしょうか。

    【A】中小企業の経営者のなかには、資産の多くを自社株で占めているという話をよくききます。

    とくに一代で築き上げた企業の経営者であれば、自社株をたくさんもっていても別に驚くことではないと思います。

    しかし、問題はのちのちやってきます。その最たる時期が、相続時です。資産の多くを自社株でしめているとのことですが、自社株は換金しづらいうえに、他人にわたると会社自体を手放すことにもなりかねません。何とかして自社株を渡さないようにと考えてきたのでしょうが、では、相続が発生したときに、相続人は自社株をどのように分配すればいいのでしょうか。たぶん、経営者であれば、次期代表者に自社株を譲り、会社の存続をしてもらいたいと思うはずです。子息が後継者であれば、なおさらでしょう。

    ところが、後継者にだけ自社株が渡ったとして、他の相続人には相続資産はないのかとなります。ここに、争族問題に発展する火種をつくってしまう可能性が出てくるのです。相続人には遺留分という法律で定められた最低限度の相続割合が保障されていますので、遺留分の減殺請求権を行使されれば、相続した経営者であっても太刀打ちできません。

    こうした問題が起こらないようにするために、自社株だけでなく、他の資産などにも分散しながら、後継者問題と同時に相続人同士が争わないように早くから考えておくことが求められます。

  • 【Q4】自社株の評価を低くする方法はあるのでしょうか。

    【A】自社株の評価を下げる方法としては色々なことが考えられますが、実のところは、あまり効果が期待できないというのが率直なところです。そもそも自社株の評価というものは企業努力によるものが大きいですが、第三者からの評価により会社の評価を上げている場合もあります。

    ですから、自社株の評価を下げるということは、会社の評価を下げることと同義です。しかし、会社経営において、そのようなスタンスで経営をしている人はまずいません。企業をどうやって継続していくか、売上や利益をどう伸ばすか、といったことに日々神経を使っているはずです。

    ですから、自社株の評価を下げるという考え方そのものは成立しないのですが、では相続が発生した場合には影響しないというわけではありません。自社株の評価を下げる確実な方法はありませんが、少なからず相続人の負担を減らす方法として、保険を活用したり、会社自体に自社株を購入してもらう(金庫株)という方法が考えられます。もっとも高額な出費となるのは、役員退職金などですが、これも支払えるだけの原資がなければなりません。

    目先の自社株を下げるというお考えもあるでしょうが、なるべく早い段階から計画的な贈与によって相続人の負担を軽減する方法を考えられたほうが賢明といえます。

  • 【Q5】株式を上場している企業経営者です。上場株式についてはどのような評価方法がありますか。

    【A】上場企業の場合、市場で株が売買されていますので、相続が発生した場合には、(1)相続が開始した日の終値(その日が休みだった場合や、値がついていない場合には、その前後でもっとも近い終値)、(2)相続開始日の属する月の終値の月中平均額、(3)相続開始日の属する月の前月の終値の月中平均額、(4)相続開始日の属する月の前々前月の終値の月中平均値、の4つのなかでもっとも低い価格で株を評価することになっています。

    質問では、事業は順調に推移し、株価も上昇しているとのことですが、もし質問者の方に万が一のことがあった場合、相続税についてもっとも負担を強いられるのは会社経営を継承する予定の子息になります。

    中小企業で上場している場合、後継者が親族になることは十分に考えられます。問題は、自社株の評価額がどの程度になるかでしょう。上場株式の場合、上記のようにどこで評価するかにもよりますが、どれほど保有しているかによって、相当な相続財産になることは予想されます。じつは、この自社株が事業承継に際してもっとも後継者の負担となるものなのです。質問者の元気なうちに、自社株についての対策を講じることをおすすめします。