【2】相続事業承継対策 | (2)小規模宅地

相続事業承継対策に関する以下のQ&Aにお答えしています。
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(2)小規模宅地の質問を表示しています。

  • 【Q1】もし相続税が課税された場合、現金が用意できないと自宅などを売らなければならないのでしょうか。

    【A】相続税が課税されるには、相続財産について財産ごとにそれぞれ評価し、正味相続評価額から基礎控除額等を引いた金額がプラスになった場合に、その部分について課税されます。

    自宅などの評価ですと、土地が自分のものならば路線価方式か、倍率方式を用いて算出するか、時価の80%とされています(新築家屋の固定資産税評価額は建築費の50%から60%程度といわれます)。

    また、家屋については、固定資産税評価額で評価されます。しかし、自宅に住み続けられないという事態になってしまうと、残された家族の居住先がなくなってしまうおそれが出てきます。

    そこで、住宅などの土地(特定居住用宅地)については、ある広さまでは80%減額され、20%に課税されます。これを「小規模宅地の特例」といいます。小規模宅地の特例では、居住用の宅地が240平方メートルまでならば特例を適用できます。

    ただし、特例の適用を受けるには、(1)配偶者がその土地を相続する、(2)同居する子どもが宅地を相続し、相続税申告期限までそこに住み続ける、(3)相続前の3年間に、相続人もしくは配偶者の持ち家に住んだことのない子どもが、宅地を相続する、などに該当することが必要です。

  • 【Q2】税制改正により、小規模宅地の適用範囲が変わったとききました。どのようになったのでしょうか。

    【A】平成25年度の税制改正により、相続税の基礎控除額が現行から引き下げられたことにともない、小規模宅地の特例の見直しもされました。

    どのように変更されたのかというと、これまで小規模宅地の特例の適用条件を満たした居住用宅地の場合、適用面積は240平方メートルが上限でしたが、適用面積の見直しにより330平方メートルまで拡大されました。

    この改正は、都心部の土地所有者への課税を緩和すると期待されています。具体的にみていくと、宅地面積が330平方メートルで、1平方メートルの相続税評価額が15万円と、60万円の2パターンで計算してみます。従来の制度で計算すると、15万円のほうは240平方メートル×15万円=3,600万円に80パーセントを乗じた2,880万円が減額されます。60万円では、240平方メートル×60万円=14,400万円となり、これに80パーセントを乗じた11,520万円が減額されます。

    新たな計算式で算出すると、15万円の場合は4,950万円の宅地が3,960万円、60万円の場合は19,800万円の宅地が15,840万円減額されます。1平方メートルの単価15万円の場合の軽減額は3,960万円-2,880万円=1,080万円増額となるのに対して、単価60万円の場合は15,840万円-11,520万円=4,320万円も軽減額が増えることになりました。

    このように、相続税評価額の高い都市部については、改正後の減額は大きくなるわけです。

  • 【Q3】現在、自営業をしています。自宅兼お店なのですが、小規模住宅の特例の適用を受けることはできますか。

    【A】居住する自宅のほかに、お店が併設されているとのことですが、適用要件に合っているならば、「特定居住用宅地と特定事業用等宅地の完全併用適用」に該当すると思われます。

    特定居住用宅地はQ2でも詳しく説明したとおりですが、特定事業用等宅地とは、相続税の申告期限まで事業用として継続している場合など、ある一定の要件を満たした事業用等宅地であれば、適用されるものです。

    事業用等宅地の上限面積は400平方メートルで変更はありませんが、居住用宅地等との併用が完全にできるようになったことがメリットとしてあります。

    たとえば、改正前までは、居住用宅地等が240平方メートル、事業用が300平方メートルであると、最大で400平方メートルまでしか適用されませんでした。改正により、居住用宅地等が240平方メートル、事業用が300平方メートルだったとすると、すべての面積をプラスした540平方メートルすべてが適用されることになりました。事業用は400平方メートルが上限なので、最大で730平方メートルまで適用されることになります。

  • 【Q4】現在息子夫婦と同敷地内で2世帯を建てて生活しています。もし親が亡くなった場合、住宅の評価減の適用はされるのでしょうか。

    【A】親が住んでいた居住用住宅を壊し、同敷地内に親子2世帯住宅を建設した場合の評価減についてのご質問です。

    2世帯の場合、これまでは外階段などで親子世代が行き来できるような状態でなければ、個別の独立した建物とみなされて、子どもが相続した場合は適用ができませんでした。これが税制改正により、被相続人の親族(配偶者や子ども)が相続または遺贈によって取得した敷地内に居住用の宅地等がある場合、被相続人およびその親族が居住していた部分に対応する部分を、特例の対象とすることとなりました。

    これにより、外階段などの有無に限らず、独立した上下2階建ての2世帯住宅であっても、区分登記がされていなければ、当該建築物の敷地全体が特定居住用宅地等の適用対象になったのです。

    これにより、敷地面積が330平方メートルまでは、80%の評価減の特例を適用されることになります。

  • 【Q5】最近、老人ホームに入居していた母親が亡くなりました。入居前まで住んでいた住宅は空き家でしたが、相続財産としてどのような評価になるのでしょうか。

    【A】まず、老人ホームに入居していた母親がどのような立場だったのかで変わります。

    もし、母親が終身利用権を取得して老人ホームに入居していたのならば、以下のような条件かどうか、確認する必要があります。

    条件とは、被相続人(ここでは相談者の母親)が介護のために老人ホームに入所していたこと、被相続人(母親)が住んでいた家屋がその後貸付等がされていないこと、の2つになります。この2つのを満たしている場合には、空家となっていた母親の家の敷地については、特定居住用宅地等の適用が認められるようになりました。